特許政策は大丈夫なのか?

 先日、米国で東芝が特許侵害で400億円(*1)の支払いを命じられたそうだ。今日には、ゲーム機、プレーステーションが特許侵害で米国での販売差し止めと96億円の賠償命令が出されたという。
 特許で負けると(特にアメリカには)簡単に100億円単位の損失が出ると言うことだ。特許に対抗するには、使用料として高いお金を払う(*2)か、こちら側にも特許を取得している(*3)しかないのだろう。
 しかし、日本の特許政策はどうだろうか? 特許を生み出す者、はなわち発明家、技術者を大切に扱っているだろうか? 中村修二先生と、日亜化学が争った青色発光ダイオード特許訴訟で東京高等裁判所は数億円の和解金しか認めなかった。企業が給料を出し、設備を出したのだから、取り分のほとんどは企業が取るべきで、発明者個人はそれがどんな偉大な発明であろうと数億円もあれば十分だというのが東京高等裁判所の裁判官の浅はかな思いこみだろう。従業員に給料を払い、研究設備を整えることくらいどこの企業でも可能で実際にやっていることである。そこで大勢の研究者、技術者が研究、工夫を重ねても使える発明などなかなかできないのが事実なのだ。給料と設備では決して偉大な発明は生まれず、希有な才能に恵まれた者が偉大な発明を成し遂げ得るわけで、属人的な要素が極めて大きいことを、東京高裁の裁判官殿は看過している*4)のだろう。
 裁判所も酷い裁判をするものだが、立法府はもっと酷いものだ。この裁判を前後して、職務発明の規定である特許法第35条を変更してしまった。労使で契約して決めろということだ。日本の労働契約の現状は、雇い入れる側すなわち企業が圧倒的に優位だから、現実的には職務発明における企業の取り分を企業が決めることができるように法律を変えてしまったのだ。
 このような特許政策では日本の発明は衰退する一方だろう。そして、外国から莫大な特許料を吸い上げられ、日本の富は海外に逸失してしまうに違いない。

*1:まだ上訴審で争うようなので確定ではない。また、子会社が追加で90億円の支払いを命じられているという。

*2:これはすでに「対抗」しているとは言えないだろうが

*3:それぞれの特許を相互に使用を認めることで特許料の支払いを免れることもできる。クロスライセンスなどという。

*4:または技術者ごときに、自分より高給をとられるのが耐えられなかったのか、数百億円の報酬というのものが感覚的に受け入れられなかったので意図的にそうしたとも思われる