携帯ゲーム機紛失
小学1年生の息子(以下「甲」という)が友達の携帯ゲーム機(「任天堂DS」というらしい。以下「当該ゲーム機」という)を紛失するという事件が起きた。
児童館に友達乙が当該ゲーム機を持ってきていたという。それを別の友達丙が借り受け遊んでいたところ、甲が丙から当該ゲーム機を転借し遊んでいた。甲は当該ゲーム機を乙または丙に返却しようとするが、付近に乙、丙ともに姿が見えないため、当該ゲーム機を児童館前に置き(*1)、乙、丙を探しているうちに当該ゲーム機の所在が判らなくなったという。
刑法の問題ではないので、甲、乙の罪責を論じても仕方がない。民事で考えましょう。
(借主による使用及び収益)
第五百九十四条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
乙が甲に当該ゲーム機を無断転借(*2)しました。又貸しは民法594条で禁止されています。又貸しをした場合は、契約を解除できる(*3)。でも、もう無いのだから返してと言うだけ虚しい。こんな場合は損害賠償を請求(*4)できる。
確かに又貸しするなということは決められている。でも又貸ししちゃったらどうなるのだ?
持ち主は貸した者に対して「返して」とは言えるけれど、又借りした者に言えるのか(*5)?
今回は又貸しと知っているけれど、又貸しと知らない場合はどうなるのだ? 知らずに又借りした人は、いきなり知らない人から「私のだから返して」と言われて返せるか?
考えてみるといろいろ奥が深い・・・???
まあ、
- 乙は丙に無断転貸借で返還請求できる。
- 甲が無断転借につき悪意の場合には、乙は甲にも返還請求できる。善意の場合には、乙は甲に所有権に基づく返還請求ができる。
- 使用借権は即時取得できないので、善意の場合にも所有者に対抗できない。
- 乙は丙に、無断転借したことを違法として、709条により損害賠償請求ができる。
- 甲が無断転借につき悪意の場合、承諾のある転借権者が善管注意義務を負うのと均衡により、全館注意義務違反として、乙は甲に損害賠償を請求できる。
- 甲が無断転借につき善意の場合、、、うーんこの場合、乙は甲にどうやって請求するだ・・・論理破綻。乙の所有権侵害で掛かっていくか?
さらに事態を複雑化させて、丙が初めから着服の意思で借り受けたとします。この場合には詐欺罪が成立しますね。詐欺で得た物を他人に貸せば、どうなるの?
- 使用貸借の場合
- 賃貸借の場合
- 譲渡の場合
少なくとも3.の譲渡の場合には、善意の第3者は所有権を即時取得することが可能です・・・。いろいろ考えると、複雑ですね。