映画「ユナイティッド93」

 5年前の同時多発テロでハイジャックされ、勇敢な乗客たちによってただ1機だけテロリストの目的が果たせなかったユナイティッド93便の話です。
 事実を元にして作られた映画なので結果はわかっていてもあっという間に映画の世界に引き込まれます。

 ハイジャックで航空管制官、空軍などが混乱している間になすすべもなく1機、2機とハイジャックされた期待がニューヨークのワールドトレードセンターに突っ込んでいきます。レーダで飛行機の飛ぶ様子を把握して航空管制をしていると思っている方はビックリしたかと思いますが、レーダとは案外見えないものです。特に低い高度を飛ぶ飛行機は見えません。また、普通は航空機に積んでいる航空管制用の電波応答装置*1が飛行機から出した電波を受信してレーダを表示している*2ので、ATCトランスポンダーを飛行機側でオフにされるとたちまち飛行機を見失い*3ます。
 ハイジャックされても、多くの場合は犯人は何がしかの要求を出し、パイロットが操縦を続けるのでATCトランスポンダーからハイジャックされたという緊急コードを発信することでハイジャックされたと航空管制側が知ることができます。しかし、このハイジャックのように何ら要求することなく、即座にパイロットを殺してハイジャック犯人自らが操縦して自爆テロ攻撃を行った今回のような場合にはハイジャック信号が出されることはなく、しかも前代未聞の同時ハイジャックテロであったため航空管制がハイジャック機を把握できず、航空管制が混乱した様子がよく描かれています。
 そんななか離陸したユナイテッド93便がハイジャックされ、乗客たちが家族との電話での会話で事件を知り、ハイジャック犯と戦う決意をし、不幸にも墜落した。そんな内容がよく描かれています。

 内容が重い映画です。先日、ロンドンで大規模テロを計画した犯人が捕まったこともあるように、過去の出来事に終わらせてしまうことができない事件でしょう。セキュリティ意識の欠落している日本の空港がテロリストの出発点とならぬよう願うばかりだ。
 見方次第でいろいろな考えがあると思いますが、是非、この映画は見ておいて損はない映画です。

*1:ATCトランスポンダーといいます

*2:こういうのを2次レーダといいます。

*3:もちろん飛行機で反射した電波を受信する1次レーダとしてのモードもあるでしょうが、見える範囲は限られますし、どの飛行機かわかりません。高度も不正確