迷惑メール

 どこでどう調べたのか、迷惑メールがやってくる。だいたいは無視してそのまま削除するだけだが、中には楽しい内容のものがあるので確認だけはする。
 そんななか面白いものを見つけたので紹介します。

現在、お客様は仮登録状態にあります。
至急、本登録をお済ませ下さいます様お願いします。
仮登録の状態のままですと、当サイトのサーバーに影響
がでてしまい、損害賠償請求する場合もございます。

 損害賠償請求すると書けば、驚いて連絡を取ろうとするという計算だろうか? 私場合は、笑ってそのままデリートして終わりだが、気にする人のために情報を。

 勝手にメールアドレスを集めて仮登録しておいて、その状態でサーバーに影響が出ても、知ったこっちゃないですよね。損害賠償請求が認められるには、

  1. 損害賠償を支払うべき人が、不法行為をしているか
  2. 債務不履行をしている

必要があります。

 1.の「不法行為をしている」ということは、請求される人が相手に何かしていなければなりません。「している」ですからね。何もしていないのに不法行為で損害賠償が請求されることはありません
 では、もし、そのサイトに自分から仮登録などしていた場合は、不法行為をしたことになるのでしょうか? これも、相手のサーバーに負荷を掛けてやろうとか考えて、大量に虚偽登録などをした場合は不法行為とはなるでしょうが、登録可能なサイトに登録すること自体は正当な行為なので、不法行為にならないのは常識的に解ると思います。また、不法行為責任を請求する場合は請求する側が立証する責任があるので、請求自体が難しいのです。まず1.は無理でしょう。

 2.ですが「債務不履行*1)をする」には、その前提となる契約が成立していなければなりません。ですから、登録行為を自分から行っていない場合は当然、債務不履行責任を負うことはありません。
 また、自ら登録をした場合は、webでの登録行為でも契約は成立します。しかし、この場合も消費者契約法の要件を満たしていなければなりません。登録(通常の行為)で生じたサーバーの不具合の補修費用をユーザーに負担させる条項が契約に盛り込まれていても、一方的不利益条項として消費者契約法第10条(*2)により無効になることは間違いないでしょう。だから、損害賠償できる契約が無効なので、損害賠償請求はできないことになります。

 まあ、いずれにしても、まともに裁判しても相手に勝ち目はないので、請求してくることはないでしょうね。

*1:債務不履行とは、契約から生じる債務(義務)を履行しない(行わない)ことなので、その前提となる契約が無ければ義務もない。義務がなければ、不履行もないということになります。

*2:消費者契約法第十条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効) 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。