納得できない請求争い方


 請求書が届いた場合。その請求に納得ができるものであれば払えばよいのですが、世の中には納得のできない請求というものが沢山あります。その最たるものは架空請求*1)ですが、その他にも例を挙げると、

  • 商品が壊れているのに代金を請求された
  • 商品が届かず請求書が届いた
  • 頼んでもいない商品が届き、請求書も同封されていた
  • 頼んでもいない番組を電波で放送し、見てもないのに代金を請求された(NHK)

など、違法か適法かは別として、「納得のできない請求」というのは世の中に多数存在します。


 納得のできない請求でも支払ってしまったら取り返すのは至難の業なので、支払う前に徹底的に争いましょう。現実に、世の中の債務者というのは債権者と常に戦い、債権者はその債権を回収しようと戦っているのです。納得のできない請求を争うことは悪いことでも何でもありません。


 私ならどのように争うか、例として「http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20060926ih21.htm」の記事のような請求が来た場合を考えてみる。

 まず、

不払い者に対し、民事督促手続きを行う旨などを明記した最終的な通告書

これは全く無視。返事もしませんし、届いたことを認めることもしません。裁判所から届いた書類ではないので対応しません。普通便で届いた請求書(*2)は無視です。

 次に内容証明郵便で請求が届いた場合。内容証明郵便を送るには千何百円かの費用がかかるので、相手も本気だと思われます。それで折れるなら払いますが、内容証明だろうと何だろうと納得できないものは払わないのが私の考え。よく「内容証明郵便を放置すると裁判になったら負ける」と思っている人もいるようですが、内容証明郵便に反論する義務はありません。下手に反論すると、請求を認めるように文言が含まれていると不利に確定する場合もある(*3)ので、基本的には無視できるものは無視です。

 さらに、

民事督促手続きは、簡易裁判所を通じて行う

と、民事督促手続きによる督促状が裁判所から届いた場合ですが、これは無視すると請求が確定しますので、同封されている「督促異議の申し立て書(*4)」を返送します。
すると、請求した側は、督促手続きした意味が全くなくなり、改めて訴訟を起こすしかありません。

 さらに訴訟を起こしてきた場合、請求金額が高いものなら負けると大変なので弁護士を捜しましょう。こんな段階で、消費者センターなど相談するのは時間の無駄(*5)です。
 金額が安ければ、自分で訴訟をすることも可能です。基本的には送られてきた訴状に書かれている相手の主張に対して「そんなことはない」「そんなことはない」と書いて送るだけですから。

 かなり具体的な話しですが、受信契約をしていない者に、NHKが請求して裁判で勝つのは非常に難しいと思います。まず、

  • 「契約していない」ので支払い義務は無いことになります。

放送法には「契約しなければならない」というだけで、「テレビがあれば受信契約したものとみなす」などと契約を擬制されていないので、いきなり受信料請求訴訟を起こすことは無理でしょう。
 まず、

  • 「あなたは、●月●日にテレビを買った。」とか「○月○日にテレビかあった」

と証明して、

  • 放送法により受信契約を結べ
  • 結ばれた受信契約により、受信料を支払え。結ばないなら、受信料相当額の損害賠償を支払え

となるはずです。

 ところが、「私の家にはテレビがあります」なんて言わない限り、HNKがテレビがあることを証明する必要があるのです。でも、家宅捜索はできませんし、望遠レンズで室内の写真を撮って証拠として添付することもできないでしょう。正当な手段であれば、提訴前に証拠保全の申し立てをしてテレビの有無を調べることもできますが、そうなったときには一端支払う等の対応で逃げることはできます。

 裁判にて、無事相手の請求が認められなければ、万歳。もし、相手の請求が認められた場合はどうなるのでしょうか?裁判の判決とは何でしょうか?ここではまだ「負け」ではありません。債権回収の実務は債務名義(*6)を得てからの勝負なので、ここで債務者と債権者の争いが始まるのです。
 「支払え」と判決出て支払わなかったらどうなるかというと、「罰として支払いが遅くなったら、そのときまでの利息も払いなさい」ということだけです。払いたいときに払うもよし、そのまま放置するもよしです。
 あと、強制執行ができると言っても、その債権に優先弁済効はありませんので、他の債権にも債権額に応じた配当をしなければなりません。NHKの受信料債権5年分でせいぜい6万円、強制執行しても配当されるのはたった何百円などということあり得ます。強制執行のための執行費用もでないことになり、とても強制執行などできませんよ。そして、判決が確定しても10年経てばその債権は時効消滅します。 まあ、添付命令対策とか、強制執行で他の債権の期限の利益を喪失して困る人はその対策が必要ですけど。


 よろしければ、人気blogランキングもクリックしてくださいね。

*1:架空請求」というと請求がないような意味にとれそうです。正確にいれば、架空債権について支払いを求める請求ですね。

*2:納得できない請求に対する対応例なので、納得できる請求であれば、普通郵便でも、FAXでも口頭でも支払うことは当然です。

*3:自分に不利なことを認めた場合は、それについて証拠がなくても認定されます。そして、自分に不利なことを認めると事後に撤回できません。民事訴訟法上の「自白」といいます。

*4:これには理由は不要で、ただ「異議あり」に印をして返送するだけです。

*5:悪徳請求のための統計資料としての通報の意味はあります。まあ、例にとったNHKの場合は、この通報の意味としても無意味でしょうね。

*6:確定した判決と同じ効力を持つもの。強制執行が可能となります。